「親の田んぼに家を建てたいのだけれど」という相談はよくあります。
語尾に「けれど」とつくのは、できるかどうか、または分譲地を買って建てたほうが良いか、と心配だからでしょう。
結論から言いますと、場所がOKならその田んぼに建てたほうが良いケースが多いです。
造成費がかかるとしても、買うよりは安く上がることが多いです。
ただ、田んぼや畑の農地は自分の土地であっても自由に家を建てることは出来ません。
農地に家を建てる場合の注意点はいろいろありますが、今日は農地転用をする流れについて話していきます。

農地とは
「耕作の目的に供されている土地」のことを言います。
登記情報では地目(ちもく)が「田」や「畑」になっている土地です。
農地に家を建てるには「宅地に用途を変更する」という「農地転用」をする必要があります。
誰が家を建てるのか
農地の所有者が自分の家を建てる場合は「4条」
農地の所有者が売るなり、貸して、別の人が家を建てる場合は「5条」
になります。
つまり
自分の田んぼに自分が家を建てる時は「4条」
親の田んぼをもらって息子が家を建てる時は「5条」
親の田んぼを息子が借りて家を建てる時も「5条」
人の田んぼを買って建てる時も「5条」
ということです。
この「4条」「5条」というのは農地法の4条、5条の届出、許可申請をする必要があるということです。
田んぼがある場所によって「届出」と「許可申請」は変わってきます。
期間はどのくらいかかるか
「許可申請」は25日締め切り、翌月10日に農業委員会の審査、20日に許可という感じで1か月くらいです。
多くの地域で日にちは違えども、月に一回の審査があると思います。
農振除外
いままでは普通の田んぼについて書いてきました。
実は厄介なケースがあります。
それが「農振」です。
農振とは「農業振興地域」といって、文字通り、農業をするための土地として指定されている地域で農業以外の利用を厳しく制限しています。
農業をしている人が自分の家を建てるか、子供が家を建てるか。
それ以外は相当の理由がないと家を建てさせてくれません。
ですから農家の人以外が農振の田んぼに手を出さないほうがいいです。
これは厳しいので、実はこの「農振地域かどうか」を最初に調べなくてはいけません。
農業委員会に聞けば、電話でも教えてくれます。
親の田んぼに家を建てる時は大丈夫なことがほとんどです。
農振の場合の期間
農振地域であれば、まず農振地域からの除外の申請手続きを終えてから、農転の申請をする流れになります。
農振除外は時間がかかります。
審査自体に6か月から8か月かかります。
しかも、審査の受付時期も決まっていて、あまり頻繁にはありません。
半年に一度です。
自治体によっては年に1回のところもあります。
タイミングが悪いとすごく時間がかかるということです。
実際に市から県まで書類が行くので事務的にも時間がかかるということはあります。
ハードルを高くして、この期間を待ってもここに家が必要なのですね、という確認なのでしょう。
農振除外に6か月
下りてその月に農転に出して1か月
その後に造成ができるということです。
締め切りのタイミングもありますから、8か月から1年の期間のイメージを持たれておいたほうが良いでしょう。
繰り返しますが、「農振地域かどうか」をまず確認です。
これによってスケジュールが大幅に変わってきます。
地目変更
農転の許可が出て、家が建っても、登記情報の地目は「農地」のままです。
最後に地目変更登記をします。
家が建てばもう農地ではありません。
現況主義なので、地目を「宅地」に変えることが出来るわけです。
ここまでやって、めでたく手続き終了です。
費用はいくらかかるか
「農地転用」自体はそんなにかかりません。
5、6万円といったところです。
ただ設計が必要な場合があります。
排水をどうするか。
水路はどうするか。
畔の法面をどうするか、擁壁をするか。
そういう設計図をつくるとプラス7、8万円かかります。
さらに費用が掛かるのが分筆のいる場合です。
農地転用は500㎡(151坪)までなのです。
農家住宅は1,000㎡までです。
田んぼ一枚はそれより大きいことがほとんどなので、分筆して500㎡以下にする必要があります。
建ぺい率は22%以上という条件もあります。
そこからも面積の制限は出てきます。
建坪100㎡なら、宅地に変えるのは454㎡が限度になります。
それより大きな田んぼに家を建てる場合は分筆しないといけません。
分筆費用は田んぼの大きさ、内容によりますが、20万円~30万円くらいです。
隣地の所有者の数が多ければもう少しかかります。
これくらいは予算に入れておいてください。
中山間地域

山の中の田んぼで、農業に不利な地域の田んぼ地域のことです。
山地の多い日本ではこのような中山間の田んぼが多く、4割を占めるそうです。
日本の農業にとって大切な田んぼであるわけです。
あまりないので最後に書きましたが、家を建てるには最も厄介なケースがあります。
田んぼを整備するために「国からお金が出ている」ことがあるのです。
中山間地域等直接支払制度といって、
平地に比べて不利な生産条件を補うために国と地方自治体からお金が出ているわけです。
これが出ていると最長5年間は田んぼを耕作しなければいけません。
耕作しない場合は交付金を返納しなければいけません。
それも地域一帯の分をまとめてです。
それは不可能ですから期間内は田んぼを耕作するということです。
その期間が終わってから、農振除外をして農転なので、とんでもなく時間を要します。
家を建てるにはしんどいスケジュールです。
今、私は一件、中山間地域のお客様の家を計画しています。
あと1年半で期間が終わるので、農振除外などを含めて2年半後の計画です。
お客様とともに気長にやっていこうと思います。
住宅会社に依頼する
いろいろ細かく書きましたが、手続きは住宅会社に頼めば全部、手配してくれます。
住宅会社が土地家屋調査士と行政書士に依頼して手続きを進めてくれますので、お任せしていれば大丈夫です。
農業委員会に聞く
自分の田んぼのことなので興味があるという人は、農業委員会に電話で聞けば教えてくれます。
窓口に行けばよりわかりやすいです。
今日は農転の流れについて書きました。
みな様の家づくりの参考になれば幸いです。
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