地面師55億円詐欺事件と土地決済

前回、土地決済について記事を書きました。

その流れで今日は大きな土地取引の事件について書きたいと思います。

Sハウスの55億円土地取引詐欺事件です。

 

何度も報道されましたよね。

「地面師」という言葉を初めて聞かれた方も多いと思います。

私は前職のマンションディベロッパーで9年働いていましたから、やはり近くで地面師の存在をちらちら感じたこともあります。

ですから地面師という言葉を聞くと何とも嫌な感情が起こります。

プロがだまされる

Sハウスはもちろん誰でも知っているトップハウスメーカーです。

マンションも手掛けていて、マンション用地での取引事故です。

 

不動産のプロがだまされた。しかも超一流企業。

55億円という被害金額があまりに大きい。

話題性たっぷりです。

 

「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものです。

 

しかし、実は被害にあうのは不動産のプロであるデベロッパーが多いのです。

今回もそのケースです。

全貌はまだわかっていませんが、報道の範囲で見てみましょう。

 

地面師

不動産を使った詐欺師を「地面師」といいます。

だいたいグループで詐欺を働きます。

 

地面師は戦後のどさくさに跋扈したそうです。

役所が戦災で機能していない時代ですね。

バブルのころも暗躍していたといいます。

 

そして、現在でも大なり小なり地面師は存在して、詐欺を仕掛ける土地と相手を狙っています。

 

地面師は「なりすまし」と「偽造」で犯行を行います。

 

土地決済に必要なもの

前回の記事にも書きましたが、土地の決済に必要なものは4つです。

 

公的身分証明書

本人確認に必要です。

偽造パスポートを使ったようです。

ふだん、免許証はよく見ていますが、パスポートはそんなに見慣れていません。

巧妙に偽造されていれば本物と偽造は区別つかないでしょうね。

 

権利証

権利証は時代時代によって書式が違います。

手書きのものから現在の暗証番号にシールを張ったものまでいろいろです。

事件では権利書は失くしたとして、公証人が本人確認をした書類を使ったようです。

つまり書類自体は本物ということになります。

 

印鑑証明書

失くしたということにして役所で印鑑登録からして作り直しています。

これも書類としては本物です。

 

実印

登録しなおした印鑑ですから本物ということになります。

 

つまり本人確認のパスポート以外は、ものとしては本物を出してきたということ。

これは決済時だけでは見破れないですね。

だまされてしまいます。

 

事件の経緯概要

Sハウスのホームページから経緯概要を一部引用します。

 

『東京都品川区西五反田の土地建物につき、その所有者と称するA氏(のちに、偽物と判明しました。)から、その知人の仲介者が実質的に経営する会社(以下X社といいます。)を中間の売買当事者とし、Ⅹ社から転売される形式で、当社がこれを買い受けることとなりました。4月24日、A氏とX社の間の売買契約、X社と当社との間の売買契約という2件の売買契約を同時に締結するとともに、所有権移転の仮登記申請手続きを行ったうえで、手付金を支払い、仮登記が完了しました。

売買契約締結後、本件不動産の土地取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文章通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続きを進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。当社は直ちにA氏との間で留保金の相殺手続きを実施し、実質的被害額は55億5千万円となりました。』

 

少し長くなりましたが、IR情報から引用しました。

Sハウスは捜査上の秘密保持のために、これ以上の詳細な情報は出していません。

対策

結果論になるので、Sハウスには申し訳ありませんが、専門家はいろいろ指摘していますし、私も同意見です。

 

特に致命的なのは経緯概要にある、リスク情報を無視したことですよね。

あと、基本の面談が形式だけだったというか、疑う視点が欠けていたということ。

 

アナログな泥臭い手法も大切です。

他の声を掛けられたマンションディベロッパーは近所のヒアリングなどで所有者と違うと見抜き、話を進めなかったそうです。

これほど高額な土地ですから、やはり近所のヒアリングが必要だった。

そうすればそもそも話に乗らなかったかもしれないということです。

 

 

リスク情報

経緯概要には『複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文章通知等の形で届くようになりました』とあります。

5月にはSハウスに土地所有者から「売買契約はしていない」という内容証明が届いているそうです。

これらの警告を『嫌がらせの類』とすべて無視するのですから、かなり前のめりです。

チェックする部署もあったのでしょうが、買う力のほうが断然大きかったのでしょう。

よく想像できます。

「社長案件」というやつですね。

 

面談

地面師グループの所有者役の女性は面談時にぼろを出しているそうです。

自分の干支を間違ったり、現地の住所を間違ったりしたそうです。

これも結果論ですが、怪しさ満載です。

 

所有者役というのは所有者の年齢性別に合わせる必要があるので、その時その時でそれらしい人を引っ張ってくると言います。

つまり、うまい話で詐欺に加担させられた人なわけです。

常習の地面師ではないわけです。

だからそんなへまをするのでしょう。

それを見抜けないのが人間の心理の不思議なところです。

 

本人確認がすべてのスタート

逮捕者が十数人出ていますが、まだ捜査中のため、わからない点がたくさんあります。

報道情報からこの記事を書きました。

教訓は多いです。

基本の「本人確認と意思確認の徹底」これにつきます。

身が引き引き締まります。

ではまた。

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